さて、前回の条件を踏まえたハードウェアの選定を行っていく。いきなり余談だが、筆者のPC自作経験はCPUが486の頃から始まり、WillametteアーキテクチャのPentium4の頃に止め、そこから暫くメーカーPCやショップブランドのPCを主に使ってきた。最近になって値段がこなれてきたCore2Quadでマシンを組み、自作PCの世界に再度足を踏み入れたのだが、自作系知識が数年ほどぽっかり空いている。情報のキャッチアップは行っているのだが、以下変なことを書くかもしれないので承知いただきたい。また、自作スタイルはコストパフォーマンスバランス重視型で、その時代の最大パフォーマンスを追い求めることはしていない。
メインのチューナーを考える
録画鯖であるため、まずはチューナから考える。地デジ・BS/CSの視聴・録画に対応しているチューナはIOデータ、SKNET、BUFFALO、ピクセラ、アスクなど各社から販売されている。それぞれ一長一短あり、値段もこなれてきている。各種ブログを見ていても多種多様だ。
ただ、地デジしか見れなかったりするものもあり、慎重に選ぶ必要がありそうだ。ネットで見る限り、PT2というのが有名らしい。地デジ/BS/CSの三波チューナを二基搭載し、多チャンネル(4チャンネル)同時録画が可能であること、今後映像のエンコードを行っていくにあたり障害が少ないこと、ネットからの情報が集めやすいこともありPT2を採用することとした。
搭載PCを考える
次は24時間稼動させるPCであるが、PT2がPCIバスであるため、PCIスロットを搭載したものでなければならない。最近のマザーボードはPCIeスロット全盛で、PCIスロットを搭載しないものも多く発売されている。マザーボードの選定には注意が必要だ。また録画鯖であればCPU性能も大事だが、よりHDDへの書込み性能が重要である。以前MTV2000なるものを使った際には湯水のようにIDEの帯域を使い、コマ落ちしている、していない、ということに一喜一憂していたものだ。それよりも遥かにピクセル数の多い動画を扱うのである。HDD性能は高い必要がある(昔と比べHDDの高性能化が著しい現在においてははそんなに気にする必要がない、というのを知ったのは最近だ)。また、冒頭でお話したとおり24時間の稼動を目的としているため、ファンやHDDが煩いのも嫌だ。ケースファン・電源ファンは静音で、HDDも静音ケースに入れて、ケース内をシールドして、、、さらに水冷か?といろいろ悩み考えた。
が、結局新しくマシンを組まず、筆者宅で現役を退いたDell Dimension 9200をサーバーマシンとして復活させる事とした。PCがあまっていた、ということもあるのだが、上記のようなマシンを一台組むと予算的にも厳しいこともある。世の中は世知辛いが時代が悪いし、復活させる事はエコだと考えることにする。
さて、このマシンは2006年にDellのBTOで組んだものである。筆者宅へのWindows7 x64導入に伴い、値段が下がってきたCore 2 Quad機にメインマシンの座を奪われた。このマシンが現役のころは、メールやネットのほか、DVカメラからの取り込み、エンコード、DVD焼きなど多方面で活躍した結構お気に入りのマシンであった。
写真は http://abc.s65.xrea.com/dell/wiki/Dimension/9200/ より拝借。
スペックは以下の通りである。
CPU: Intel Core 2 Duo E6400 2.13GHz
CHIPSET: Intel P965+ICH8R
MEM: DDR2-533 2GB
HDD: SUMSUNG 160GB
GRAPHIC: NVIDIA GeForce 7300 LE 256MB(ファンレス)
DVD: Pioneerスーパーマルチ
NIC: IntelR82566DC Gigabit Network Connection 10/100/1000
SLOT: PCIe x1、x16、x4、PCI、PCI、PCI
CASE: BTXケース
拡張スロットはPCIeの他、PCIが3スロットあり、今回の要件を満たしているため拡張性は高い。なおPCIe x16はGeForce7300のファンレスがすでに装着済み。また、PCIのひとつはBTOオプションであるIEEE1394カードが装着されている。これらはそのまま使用することにする。
ケースは今となってはあまりパーツショップでも見なくなったBTX規格である。Intelが提唱し、排熱効率を考えたレイアウトとなっておりマザーボード上のメモリスロットや小さなSATAコネクタまで横向きである。ケース背面は電源部、IO端子上部共にメッシュとなっており、後方への排気性能は非常によさそうだ。
ファンはケース前面に二個と電源に一個で、いずれも静音タイプで回転数は低め。前面吸気、背面排気方式で、前面ファン一つはダクトでCPUヒートシンクに風が直接当たり、そのままケース背面メッシュ方向へ一直線に抜ける。
もうひとつのファンは、HDDの基盤に直接当たる。HDD設置は、自作用ATXケースでよくある重ねる方式ではなく、横に2台並べられる形で、ケースの最底面に設置される。上面がHDD基盤となり前面ファンにより横から風が当たる形になっている。
BTXでIntelが狙っていたとおりのレイアウトになっているのだろう。エアフローと排熱効率がよく考えられていると感じた。常時稼動のサーバーとしてのポテンシャルは高いだろう。ただ埃には注意する必要がある。定期的に圧縮空気で掃除することにしよう。
問題はハードディスク容量だ。データ用にある程度の容量追加が必要だ。特にハイビジョン映像を撮りためていくには数百GBではあっという間に一杯になってしまうだろう。今回は入手性の高さと値段がこなれてきている1TBを2台用意し、HDDへのデータスループットを上げるためにRAID0(ストライピング)で構築することとする。冗長性は?と言われそうだが、基本的に録画したものは一度見て捨てるスタイルとするためあきらめる。そのうちRAID5を検討するとしよう。
メモリは、動かすアプリは限られているため、当面2GBのままとする。使用するソフトウェアによっては常駐することで場合によりメモリを1GB以上確保したりするものもあるようだが(JAVAとか)、それでも2GBを食いつぶし、スワップが頻発することはないだろう。それに現状512MBがすでに4本装着済みで、増設するとなると2本捨てなくてはならない。実運用の状況を見ながら今後検討することにする。
ネットワークについてはGigabitであり、十分であろう。DLNAクライアントであるPS3への配信でどれだけ帯域を使用するかにもよるが、なにより現状これより帯域を増やす方法もない。
ハードウェアエンコーダ
いくら2TBの容量があるといえど、いつかはあふれる日が来る。30分番組でも3~4GB消費するハイビジョン映像ならなおさらファイルサイズの削減を検討する必要がある。数年前のミドルクラスPCのスペックを使用する以上、ソフトウェアエンコードに頼るのは危険だ。PCリソースをたちまち食いつぶし、サーバーの本来の目的である録画そのものまで影響することは必至だ。
ここはハードウェアエンコードを検討してみたい。
そもそも現時点で十分に入手可能なハードウェアエンコーダはH264/MPEG2に対応したものがほとんどである(そもそもコンシューマ向けの数が少ない)。以前はDivXのエンコーダもあったが、入手は難しそうだ。DivXやXviDが出てきた頃は覇権を握るのかと思ったのだが、そうでもないようだ。
選んだ製品はハードウェアエンコーダとしては筆者の感覚で比較的低価格なLeadtekのPxVC1100とした。発売日は2008年11月だが、まだ十分流通しているようだ。PxVC1100は・・以下プレスリリースの丸写し。
『WinFastR PxVC1100』は、IBM、SONYグループ、東芝が共同で開発した次世代プロセッサである「Cell Broadband EngineTM」のRISC型プロセッサコア「SPE(Synergistic Processor Element)」を4基、動画圧縮伸張アルゴリズム処理用にMPEG-2およびMPEG4-AVC/H.264のハードウェア・エンコーダ/デコーダの回路、マルチコア処理を司るためのコントロール回路などをワンチップに集積した東芝製メディア ストリーミング プロセッサ「SpursEngineTM」を搭載したPCI-Express ×1対応の高性能画像処理カードで、128MB XDR DRAM メモリ および 1スロットの温度適応型冷却ファンシンクを搭載しております。
http://www.leadtek.co.jp/news_release/pxvc1100.html から引用
TMPGEnc 4.0 XPressからプラグインを使用することでこのハードウェアエンコーダを使用することが可能である。(ちょっとわくわくしてきた)
要件に対し十分か
さて、上記のハードウェア選定によって満たされる要件は
1.地デジ/BS/CSのHD画質の録画ができる事
4.ファイル共有ができる事
5.24時間運用の為、静かである事
6.HDDレコーダーより安い事
7.多チャンネル同時録画
8.将来的なHDD逼迫を見込み、残したい番組は圧縮
9.消費電力は低いほうがよい
となった。
9についてはAtom系CPUを使用したサーバーには敵わないが、それでもTDP65WのCPUである。Corei3/5/7やPentium Dのマシンに比べると消費電力は低いだろう(一部を除く)。また、CPUのパフォーマンスとTDPは、CPUの世代交代が起きない限り表裏一体であり、今後運用し、機能追加を行う時点でCPUパフォーマンスが不足であればそのとき考えることとする。といっても換装できそうなCPUはConroeかKentsfieldのFSBが1066MHzのものまでの様で、QX6700か、そのうち値段が下がればX6800か。しかしXE(Extreme Edition)は値段が下がらない。。
6についてだが、最近はHDDレコーダというもの自体が減っている。時代はブルーレイレコーダなのだが、まだ値段が高い。そのためDVDレコーダといくつか比較してみた。価格.comでいくつかスペックを見てみると、2TBのHDDを搭載したものでも7万円をなんとか切るくらいだ。1TBだと4万円程度から存在するが、いずれも肝心の同時録画が2番組が最大である。以前SONYから8番組同時録画、というものがあったような気がするが、地デジの録画はできない。したがって機能に対しての値段は要件を満たしていると判断する。
残るは以下の2点
2.録画したものがPS3でHD画質で視聴できる事
3.録画予約が妻にとって容易であること
上記についてはソフトウェアの要件なので次回で判定することにする。
次回はソフトウェアの選定を行っていく。